ルノアールで粘ってます。
『暖かいお茶』出てきました。

狐さん電話中
狐「そっちはどや?
  こっちか?
  新人くんが、まとめとるで」
朱「…いつの間にか新人になってる」
狸「履歴書いらないからね」
朱「これは、つくりばなし!」

狐「動くんなら、ちゅーことで、
  若干、譲歩しないとも限らんらしいで」
朱「まず。
  ひっくり返されると、痛すぎる。
  厚めに手付入れて」
狐「もちろん、こっちがひっくり返ったら、
  倍返しやな?手付やし」
狸「…泣こう。まとまれば行けるし」
朱「不動産、こわい」
Prrrrrr
狸「はい。あー、どうもー!
  今どちらで?
  ちょうど!今相談してるんですよー
  よろしければで…いいですか!
  では、某駅A2出口出て左に、
  ルノアールという喫茶店がありますので、
  そちらへ。ええ。お話だけでも!」
狸「ということで、売主さん、来るって」
朱「さすが、つくりばなし。
  …自己資金、どんなもんかなー?」
狸「聞いてみないことには。
  …というわけで、お前、行け!」
朱「しろうと!無免許!」
狸「重説は俺が、一回五万」
朱「くぅぅぅぅ…あたしの足、帰りにあるかしら?」

『幽霊には本当に足がないのか』という、
三人の雑談中に…
狸「…来た。…今座った。
  行けデビュー戦!
  ほれ、ICレコーダー!」
朱「末代まで呪う」
狸「子どもいないでしょ?」
朱「うっさい!!」

朱「こんにちはー。初めまして。
  インチキ不動産の氷室です。
  私が本日、お話をお伺いいたします。
  どうぞ、よろしくお願いいたします」
売主さん「あ、よろしくです」
狐(あいつ、やっぱ慣れてない?)

朱「涼しいですけど、いやなお天気ですよね。
  お風邪とか、大丈夫ですか?」
売「あ、大丈夫です」
朱「お好きなもの、お召し上がりください」
売「じゃ、アメリカンで」
朱「すいませーん!
  アメリカンひとつ。
  …あとアイスコーヒー…
  水出しで!」
狸(あいつ、若干高くしやがった)

朱「お仕事、お忙しいですか?
  本日はお休みですか?」
売「まぁ、なんとか、土日休めますね」
朱「休日出勤あると、けっこう疲れますからねー」
売「でもまぁ…悩みが、解決しそうなんで」
朱「お悩みが、あるんですか?」
売「ええ…相談している件です」

狐(あいつ、ほんまに〇屋?
  もう、本題入りよったで?)
狸(いただきたいなー…こっちに)

朱「うーん。
  ご負担、と感じてらっしゃる?」
売「そうですね。固定資産税もありますし」
朱「時期、ですからねー。
  売却されずに、賃貸に出された理由、
  お聞かせいただけますか?」
売「ずるずる、引きずっちゃった面もありますし、
  多少でも、資産が残れば、と思って」
朱「では、現状は理解してらっしゃる?」
売「はっきりと、ではないですけど…」
朱「では。いい機会ですので、
  輪郭だけでも、はっきりさせませんか?
  電卓使いますが、よろしいですか?」
売「ええ、いいですよ」

電卓と手帳を取り出す

朱「まず、家賃収入、この一年どうですか?」
売「一回遅れたことありますけど…
  まず、入って来てますね」
朱「いかほど、ですか?」
売「x万5千円、ですね」
朱「遅れたときは、督促を?」
売「いや、数日遅れでした。
  そのまま入金がありました」
朱「管理会社さんから連絡は?」
売「そういえば、なかったですね」

朱「ご返済は?」
売「なんとか。ボーナスで一息、ですね」
朱「失礼ですが、ご返済額は?」
売「y万円、だいたいそんな感じです」

電卓ぱたぱた…

朱「年に直しますと。
  これだけ、
  お手元から出してらっしゃいますよね?」
売「計算してなかったですけど…
  けっこう、ですね」
朱「これに固定資産税が加わります。
  概算で…このくらいですか?」
売「そうですね」
朱「足しますと…これだけ、お客様がお支払いです。
  このまま、3年過ぎたとします。
  この金額、収入として得るのは、大変ですよね?」
売「そうですよね…」
朱「もし。空室になったら…どうなさいますか?」
売「非常に…こまります」
狸(あいつ、何者なん?)

電卓のクリアボタンを押す
朱「一回。きれいに、なさいませんか?
  今のお住まいに全く影響を出さずに、
  ご家族もそのまま。
  実は、ご検討されている買主の方、
  いらっしゃるんですよ」
売「でも…迷ってるんです」
朱「なにを…ですか?」
売「金利も低いし…
  運用している時間もないし…
  いつか、自分のものに、なればと」
朱「投資として、見てらっしゃる?」
売「そうですね」
朱「少し厳しい言い方、
  させて頂いても、よろしいですか?」
売「と言うと?」
朱「きちんと利益が上がってこその、
  投資、ではありませんか?
  現状、これだけ毎年、お金を払っている。
  残されるもの…築40年を超えた、
  中古ワンルームだけ。
  『出口』としての売却か…
  『継続』としての賃貸か…
  いずれにしても。築年数を考えますと、
  『資産』として…見合うでしょうか?」
売「どうなんですかね…
  『価値』って、あるんですか?」
朱「東京圏ですので、
  人口は流入傾向であることは
  恐らく変わらないかとは思います。
  ただ…純粋な人口減。
  例えば。お客様が東京へ
  単身、初めてお住まいになるとします。
  ご自身の物件…勧められたら、どうですか?」
売「…そうですよねー」
朱「…ためらわれます?」
売「…たぶん…」
朱「それが、市場での価値では、ありませんか?」
狸(あいつ、しっかりクロージング始めてやがる!)

朱「ただですね…
  今回、お買い求めになる方は、
  抵当権がない状態、をお望みなんです。
  つまり、売主様が、ご自身の力で、
  現状のローンを、一旦完済されて、
  抵当権抹消登記が確認されたら、
  売買実行されたいと」
売「売却益で返済はできない、ということですか?」
朱「一旦、お客様の資金で返済が必要になります。
  ただ…プラスマイナスを考えてみませんか?
  確かに、一旦大きな資金が必要になります。
  万が一のことは、できる限りないように、
  私も会社も、できる限りのことは
  させて頂きます。
  でも…。
  『悩みが一つ確実になくなる』
  そして…
  『資金繰りから解放される』
  そこに売却益が加わると…
  考えることは、できませんか?」
狐(あいつ、しっかり逃げ打ちおった!)

売「確かに、ボーナスの残りと、
  少しづつ積み重ねた貯蓄で…
  一括返済は、できるんです。
  ただ…」
朱「ただ?」
売「せっかく借りることができたので…」
朱「現在の借入金利、把握されてますか?」
売「なんとなく…」
朱「〇%です。ちなみに現在の
  メガバンクの大口定期預金の
  金利は、0.010%です。
  居住不動産ではないので、
  一般の住宅ローンが利用できないことは、
  ご存知かと思われます。
  例えば、物件を担保に入れて、
  事業者ローンをお借りになられても…
  今のご収入なら、金利が大きく下がることは、
  低金利をご認識でしたら…おわかりかと。
  土台から…やり直しませんか?」
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朱「すぐご決断になれないこと、
  よくわかります。
  資金の問題…そして、
  ご購入になられた時の想い。
  どうでしょう?
  一度、奥様とご相談になられては?」
売「そうしてみます」
朱「私も少し、安心しました」
売「何がですか?」
朱「今、少し笑顔が出ましたよ?
  私の話で、少しでも楽になっていただけたら」
売「…また、連絡します」
朱「今日の話は、上司の狸に
  しっかり伝えますので、
  狸が対応させて頂いても、よろしいですか?」
売「氷室さんがそう言うなら…安心です」
朱「じっくり。お考えになってください。
  伝票は、私が。
  では。私はここで失礼いたします」
売「ありがとうございました…」

(狸!狐!河岸変えるぞ!!)