あいかわらず!
「ハードランディング!」
強行着地!
結末、何とかならんのか!
…でも、「書けた」
原稿用紙6枚。

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 合同演奏会が終わった帰り、鈴子先輩と美香先輩と、一緒に駅へ向かっていた。
「舞由、今にも泣きそうだよ?だいじょうぶ?」
 鈴子先輩が言った。今回、演奏会で演奏した結果は、決してほめられるものではない。むしろ、自分としては「最低」だった。緊張もした。練習も足らなかった。考えれば考えるほど、「最低」という言葉しか出なかった。
「やっぱり、だめ、でしたね」
 私は鈴子先輩に言った。
「演奏会のこと?」
「そうです」
「引きずってるのかぁ。美香、どう思う?」
「そうねぇ…」
 美香先輩は少し考えたあと、
「いいこと、教えてあげる。軽いクイズみたいなもの、ね」
 そして、私を見て、こう言った。
「どうしたら、失敗できるか。失敗するんじゃなくて、できるか」
「失敗を、やること、ですか?」
「違う。できるか」
 頭の中が真っ白になった。失敗を、するのではなく、「できる」って、何だろう。
「ほら美香、舞由が考えこんでるじゃん。舞由はまじめなんだから。…そこが、舞由のいいところ、なんだけどね」
「じゃ、あくまで、私の考え方ね」
 そして、美香先輩はこう言った。
「何かに挑戦して、実際にやってみること。舞由ならわかると思うけど、挑戦もしてない、何もしてないとしたら、失敗もできないじゃない?」
 そして鈴子先輩が、楽器ケースごと伸びをしながら、こう言った。
「舞由は、四月から吹奏楽部に入ってさ。ずっと前を向いていたじゃない?低音域が弱いと思ったら、自分でしっかり練習してた。できることが増えてるのよ。けど、舞由はそれに気づいてない。当たり前だと思ってる。もし、今回の演奏が、四月の舞由がやったとしたら、どう思う?」
「多分、先輩たちについていけていません」
「ほら、気づき始めた」美香先輩が言った。
「舞由は、挑戦したんだって。今回の演奏会に。自分で納得がいかないのは、あくまで自分から見ている姿。もし、舞由が今回の演奏が失敗だと思っているなら、失敗したんじゃなくて、失敗できた、の。ね、鈴子?」
「まぁ、時間かかるかもよ?そう考えるには。でも、私から見ている今の舞由は、決して悪い方には向いていないと思うな」
「どうして、ですか?」思い切って先輩たちに聞いてみた。しばらくしてから、美香先輩がこう言った。
「ちゃんと、自分が出した結果に向き合ってるから。もし、舞由にやる気がないんだったら、落ち込むことなんてできないと思うよ?」
 そして、美香先輩はこう続けた。
「つまり。失敗できたんだって。今回の演奏会は。何もしていないのに、失敗はできないでしょ?失敗はあくまで結果。けど、結果を出すには、挑戦しなきゃいけないでしょ?だから舞由は、ちゃんと挑戦した。失敗したと思うこと自体が、舞由が前を向いている証拠だと思うな」
 私は考え込んだ。駅が見えるまで、だまって三人で歩いていた。駅前まで来ると、鈴子先輩が突然言い出した。
「さて!美香、今年もやるよ!」
「…やるんだ。去年みたいに、あとで『太った!』とか、騒がないでね?」
「わかってるって!」
「何かするんですか?」私は鈴子先輩に聞いてみた。すると、美香先輩が首を横に振りながらこう言った。
「去年、鈴子は演奏会の後、ハンバーガーを三つ食べた。それも、一気に」
「えぇ?」
 鈴子先輩を見ると、目を輝かせていた。
「ほら、あそこのファースト。舞由も来てくれるよね?よし、後輩の分は先輩二人が出そう!」
「鈴子、勝手に決めないでよ!…でも、それがいいかもね。舞由を一人にさせたくないし」
「決まった!行こう、舞由!」
 鈴子先輩は私の手を引っ張った。そして、こう言った。
「舞由がいなければ、今回の演奏会、楽しくなかったと思うから。だから、私のわがまま、聞いてくれるといいな」
「いっしょに行きます!」
 私の心は、市民ホールを出た後に比べて、確実に軽くなっていた。まるで鈴子先輩と美香先輩に魔法をかけられたみたい。前を向くなんて、考えたことなかった。けど、先輩二人に言われて、少しずつ気持ちが変わっていた。もしかしたら、これが成長って言うのかな。けど、今のところは、魔法の中にいよう。そして初めて、自分が後悔していないことに気づいた。…失敗は、できるものなんだ。
「やっぱり、魔法なんですね」
「舞由、なにが?」鈴子先輩が聞いた。
「ひとりごと、です!」
「ヘンなの!」
 鈴子先輩が笑った。そして私も笑った。そう、笑った。そして今日眠るまで、魔法が解けなければいいな、と思った。