「あたしがこう、
 浅草あたりを歩いていて、ね?
 お!粋な人!
 粋だねぇ、あの歩き方。
 どこかの旦那かねぇ、って、
 思ってたら、ね?」
「…朱実、朱実」
「なんだよ」
「そりゃー…演芸の町のそばで
 育ったからー。
 しょうがないとは、思うけど。
 話し方が、演芸っぽい。
 ていうか、演芸」
「演芸ってことはー、ないでしょ。
 ね!人様に話を聞いてもらうんだから、
 こう、立て板に水のように、
 さーっ!と、話してだよ。
 最後に粋なオチでもつけて、
 あー!見事な話だ。ぱちぱちって、
 言われるくらいじゃないと!」
「…だから、それが、演芸だって」

今ならあたし、こう答える。
『そりゃー!江戸っ子だから、
 話をするなら、こうなるだろう!!』
…と。ね。