【放談住宅 2021/06/04】
「相方ーっ!」
「…なんや。夜中に」
「きょうだいが、ほしい」
「弟、おるやんか」
「きょうだいが、違う。
 『鏡台が、ほしい』」
「ソッチか…」
「百均の鏡で、お化粧してても、
 あんまり嬉しくないんだもん!
 せめてー…
 もうちょっと大きくて、
 ちゃんとした鏡、とか」
「そもそも、
 鏡台を置くとこ、ないやろ」
「…そこ、なんだよね」

「鏡台ねぇ…
 祖母の鏡台が、
 こっち来てるんじゃ、なかったっけ。
 昔の日本映画で、綺麗な人が、
 鏡の布、ぺらってめくって、
 正座してお化粧しているようなの、が。
 …けど、あれは
 あたしが壊した記憶もあるなー…」
「壊すなや」
「祖母の嫁入り道具だから、
 もう木がゆるんでて、ねー。
 最後、ビニールの紐でしばりつけたとか、
 そんな記憶も、なくは、なく」
「子どもの頃、
 いたずらして、怒られたんやろ」
「怒られないんだよねー。特に祖母。
 『欲しいなら、ほら、あげるから!!』
 いろいろ、もらった記憶」

「その後、化粧品は決まったん?」
「一応、決着らしきものは、つきました。
 まず、CANMAKEの
 Secret Beauty Baseの下地。
 うすーく、色はついてるけど、
 ほんと、ごく、うすーく。
 で、MAYBELLINEの
 FIT meリキッドファンデーションの
 112番。
 仕上げに、CANMAKEの
 マシュマロフィニッシュパウダー。
 顔を組み立てるのが
 めんどくさかったんで、
 手の甲で試したけど、
 …ふわっと、綺麗に、できた。
 リキッドファンデは、やっぱり、
 粉で仕上げるのが、ポイントだったか」
「粉…小麦粉とか?」
「アホかっ!
 …ファンデーションは、
 どちらかと言うと、肌に食いついて、
 カバーしたり整えたり、なのね。
 パウダーは、最後に上に載せる感じで、
 マットな感じを出したり、
 自然な感じを出したり…みたいな感じ。
 『卵があると、します』
 冷蔵庫にあるはず。
 いつのだか、知らないけど」
「腐ってたら、嫌やなー…」
「割らなければ、いいのっ!!
 卵の殻の、表面。
 …けっこう、綺麗じゃないですか」
「まぁ…確かに」
「白くて、自然な感じ。
 これが。
 『ゆでたまご、だとしたら』
 ゆでたまご、みたいに、
 つるん、てっかてかな顔が、
 向こうから来たら、
 けっこう、怖いでしょ!!」
「…夜中には、やめてほしい」
「それを、それこそ
 相方が言ったように。
 …小麦粉まぶしたら?」
「…あー。
 つるん、では、なくなるわ」
「理屈としては、
 そういう感じ、です。
 アイテムひとつ
 使い方間違えるだけで、
 一気に不自然になるから、
 怖いっちゃ、怖いよね。
 まー今は、
 ネットで調べ放題、だけど!!」

「…かがみって、
 どこで、売ってるの???
 ヨドバシとかにも、あるけど、
 異様に高い。
 ヘタすると万、する」
「うーん…ホームセンター?」
「週末、元気とお金があったら、
 ホームセンターとか、
 ニトリとか、行ってこようかな。
 でも、まずは、寝ます。
 異様に疲れた、今週は!!
 人の出入りがあると、
 庶務は、大変なの!!」
「まーでも。このご時世や。
 …仕事がある、だけでも」
「そうだよね。
 そうです、そうです。
 …じゃ、おやしみー。」
「さっき起きて…
 もう、寝るんか…」
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